基板切削

| コメント(0)
記事日付: 2013/01/05
先に購入した中華卓上CNCフライス盤 「CNC3040」を使って、
切削による基板加工をできるようにする。

1. 切削による基板加工

筆者は卓上CNCを使って、切削による回路基板の製作 (以下、基板切削という) をしようともくろんでいる。
基板切削は生基板(銅箔張り基板)の表面を薄く削ることで銅箔に切れ込みを作り、回路のパターンを作るものである。
左上にある筆者アイコンは、筆者が学生のころに基板切削で作った回路の写真である。
回路基板のプロトタイピング手法の一つであり、以下のような特徴がある。
良い点:
・エッチングによる基板作成と比較すると、薬剤をあまり使わない。
 廃液処理とかが必要ないので楽。
・CNCの加工機を使うので、正確な穴開けを自動でできる。
・同様に、基板の外形カットもできる。
・外注に出すのに比べると、スピードにすぐれる。
悪い点:
・専用機を買うと高い。
 ※それでも、オリジナルマインドの基板加工器が発売されてずいぶん安く手に入るようになった。
・消耗品として、生基板のほかにエンドミルやドリルが必要。特にエンドミルは高い。
・細かいパターンの作成がむずかしい。
 2.54ピッチのピン間2本通しなんかをやろうと思うと、専用機を使っても慣れが必要。
・パターン外の余り銅箔が残ってしまう。
 半田付けがへたくそだと、ランドとパターン外を短絡してしまうことがよくある。
・上記により、狭ピッチの表面実装部品を使う基板は難しいかもしれない。
  ※がんばれば、できなくはない。
・手軽にできるのは両面基板まで。多層基板もできるとはいうが・・・・
機械加工の音がうるさいので、自宅で夜間に作業することは困難かも。
以上のことから、本気で基板を作るなら外注に出したほうがいいという意見もある。
近年ではOLIMEXとか、海外の業者が安くプロトタイピングをしてくれる。
しかし、いつでも自宅で基板のプロトタイピングができることは一つの魅力である。
卓上CNCを持ってる人であれば、基板切削をしてみるのも良いのではないか。

2. 専用機

基板切削の専用機は、カッタと基板表面の相対距離を一定にするための特別な仕掛けを持っている。
基板切削のためにはこの仕掛けが非常に重要であって、
普通の卓上CNCを使って基板切削しようとすると、いろいろと気を揉むことが発生する。
一般の機械加工はやらずに基板切削だけしたいという人は、迷わず専用機を選んでほしい。
専用機は、以下のようなメーカーが「基板加工器」などとして製造している。
筆者が知っているところを挙げておくが、ほかにもたくさんのメーカーがある模様。
・ミッツ
学生のころお世話になった。
一番廉価な機種であれば、80万~100万円程度のはず。
・LPKF
こちらも学生のころお世話になった。
ミッツと似たような値段だったような気がする。
・オリジナルマインド
上記2社に比べるととても安価なびっくり装置20万円くらい。
同社に就職した後輩に「基板加工器がほしいから作って!作ってくれたら買う!」などとお願いしていたことを思い出す。
結局中華CNCを買っちゃったから買えない・・・すまぬ・・・すまぬ・・・
趣味で普通にやりたい人は、とりあえず本機を買うのがよいだろう。

3. 汎用の卓上CNCフライスを使う場合

一般の卓上CNCフライスを用いて基板切削する場合、以下のようなことを検討する必要がある。

① パターン設計CAD

まずは基板のパターンを設計するためのCADが必要である。
基板切削のためには配線パターンの外形を作り、最終的にCNCソフトウェアが読めるGコードを生成することが必要である。
専用機であれば、CADソフトウェアとCNCソフトウェアがセットでついてくるのが普通である。
パターン設計用のCADはフリーのものを含めてたくさんあるが、外形加工データの生成は難儀である。
筆者が知るうちでは、以下のような手段がある。
・Eagle
ホビー用途で大人気な回路/基板CAD。
配線パターンの外形加工データをGコードで出力してくれるスクリプトがあるよう。
日本のホビー基板切削では一番普通の方法と思われる。
筆者はあまり詳しくないので、細かいことはかかない。
参考になるサイトはたくさんあると思う。
・TARGET 3001!
筆者が使っているCAD。びっくりマークを含めて正式名称。
ドイツの企業が作っているCADであるが、ホビー用途を強く意識しているところに好感がもてる。
本CADはGコードの出力機能があるので、そのままCNCソフトウェアにデータを渡すことができる。
なお、EagleのGUIがCAD操作 (やることを先に選んでから、対象のオブジェクトを選択するスタイル)
なのに対して、TARGET3001!のGUIはWindows操作 (対象のオブジェクトを先に選択してから、
やることを選ぶスタイル)なので、筆者にはとっつきやすかった。
ドイツ製であるが、Webサイトとマニュアルはすべて英語版が整備されているので安心。
ただ、部品のライブラリ等、細かいところでドイツ語が顔を出すことがあるのがたまにキズ
・Gynostemma
ガーバー形式の配線パターンを読み込んで、外形のGコードを出力してくれるソフト。
パターン設計CADであれば、どんなソフトでもガーバー形式のファイルを出力できるはずなので
本ソフトがあればCADを選ばないことになる。
ただし、パッドが円のみの対応 (長丸や八角形はNG) であるなど制約もあるため、今後の発展が待たれる。

② CNCソフトウェアほか

卓上CNCを操作するためのソフトウェアや、そのほか小物類。
CNC3040 のページで別途まとめている。

③ カッタ

以下のカッタ (ドリル的なもの) が必要である。
カッタはもともと消耗品であるが、扱いの不注意や加工の無理で折れてしまう事も少なからずある。
それぞれ複数本用意しておくと安心である。
(1) ドリル
部品実装用の穴を開けるドリル。
0.6、0.8、1.0、1.2くらいがあると、おおよそ対応できる。
0.8を1本で全部やってしまう手もある。
ただし、パターン切削後に穴を開けなおそうとすると、
ランドのパターンをはがしてしまうこともあるので注意。
以下のようなお店で、工業用基板加工ドリルの中古品がお安く買える。
・太陽商会
・PCBマテリアルズ
(2) パターン切削用カッタ
パターン切削用カッタとして、以下がある。
◆エンドミル
Z軸の切り込み深さに関係なく切削幅が一定であるため、高さ方向が不安定でも加工が安定する。
ただし、あまり細いパターンは描きにくい。また、刃長が長いエンドミルはすぐ折れる。
刃先のとがったカッタ
刃先のとがった部分を使って切削する。根元が太いのでエンドミルに比べて折れにくいのがよいところ。
切削幅はZ軸の切り込み深さで調整することができる。
逆にいえば、切り込み深さが少しでも変化すると切削幅も変わってしまう。
以下が入手しやすい。
・オリジナルマインド 土佐昌典VC
★2013/02/10 ミリングカッタの比較 の記事を追加しました。
(3) 外形カッタ
基板の外形カットを行うためのエンドミル。
φ1mm~3mm程度で、チップブレイカータイプのものがおすすめ。
左から「φ0.9mm ドリル」、「φ1.0mm エンドミル チップブレイカーつき」、「φ0.4mm エンドミル 」(刃長を短くしたもの)

④ Z軸の自動原点設定機能

基板切削を行うときは、以下の理由によりZ軸方向に切削する深さを正確にコントロールすることが重要である。
以下の理由による。
(1) 工具の保護
Z軸Z軸方向の深さが大きくなると切削抵抗が増すので、加工速度を落とす必要がある。
というか、速度を落とす前にカッタが折れる。
(2) 切削幅の操作
前述のとおり、刃先がとがった形状のカッタの場合、切削されるラインの太さはZ軸方向の深さに依存する。
このため、Z軸原点が重要である。
上記のため、Z軸の原点を生基板の表面ぴったりにあわせなくてはならない。
工具を交換するたびに上記の操作が必要であるため、Z軸の原点をワーク表面に自動設定できると望ましい。
★2013/01/15 Z軸の自動原点設定機能の追加の記事を追加しました。

⑤ X・Y軸の自動原点設定機能

本機能、必須ではない。
しかし、ある程度大きい基板だと加工量が多く、途中で何かしらミスが生じることがある。
その際、緊急停止や普及作業の過程で加工機が原点を見失う場合がある。
その後に作業を続けたい場合には、加工の開始時に設定した位置とぴったり同じ位置に原点を再設定しなくてはならない。
このとき、自動で原点設定できると便利である。
★2013/02/03 XY軸原点センサの追加 の記事を追加しました。

⑥ 加工台の面だし

前述のとおり、Z軸原点が生基板の表面にぴったり一致することが重要である。
そのためには、生基板を置く加工台とCNCのXY移動面が正確に平行でないといけない。
このため、加工台に樹脂板などをひいてCNC自身による加工台の面だし作業を行う。
★2013/01/27 加工台の面だしの記事を追加しました。

⑦ 生基板の固定方法

生基板をワークに固定するとき、以下が求められる。
(1) 生基板が浮かないこと
生基板がたわむなどして一部が浮いてしまうと、Z軸の切り込み深さに大きく影響をあたえる。
なお、専用機の場合、この項目はあまり問題にならない。
(2) 生基板が動かないこと
生基板が切削の抵抗を受けても動かないようにすること。
加工中に基板が動いてしまうと、パターンがずれて致命的である。
実際はパターン切削時よりも、外形カット時に大きな抵抗を受ける。

3. まとめ

以上をそれぞれ解決すれば、とりあえず卓上CNCによる基板加工ができるようになる。
加工速度向上やパターン微細化は、また別のおはなし。

コメントする

本ページの管理人

Likipon

埼玉在住の一応エンジニア。最近はシステムエンジニア気味で回路が本業でなくなってしまった。

うなりくんのファン。

メニュー

広告