低価格サーマルイメージャ

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記事日付: 2015/01/26
更新: 2015/02/11 : FLIR TG165追加

半年ぶりの更新である。
昨今、サーマルイメージャ(サーモグラフィ)の低価格化が著しい。
一昔前であれば数十万円から数百万円の価格であったが、
現在では10万円以下で手に入るようになった。

それでも個人で入手するには高嶺の花であったが、
最近になって登場したスマートフォン用アクセサリのコンシューマ向け製品は
たった200$~400$であり、個人でも購入可能な範囲である。

従来型の低価格製品

直近で手に入りそうなものを集めてみた。
なお、本調査はシマリス技研さんの2013年の記事 をベースに開始したものであるが、
この2年でずいぶん状況が変わっている。本記事は執筆時点の流行り物を盛り込んだ。

・FLIR 「i3」

FLIRi3.jpgのサムネイル画像

10万円程度。

従来型サーマルイメージャの廉価モデルである。
サーマルカメラの解像度は60×60と少なく、画角は12.5°にすぎない。
それでも昔の製品に比べたら安い。

Fluke 「VT02」

FlueVT02.jpg

8万円程度。
サーマルイメージャではなく、「ビジュアル放射温度計」と名乗っている。
同軸の可視光カメラの画像と、かなり低解像度のサーマルカメラを組み合わせたもの。
サーマルカメラのスペックは公表されていないが、温度画像単体では解像度が低すぎて
使い物にならないレベルである。

ただし、可視光カメラ画像と温度画像を重ねて表示する機能を使うことで、測定範囲のうち
どのへんの温度が周りと異なっているか、画面上ですぐにわかる。
不具合箇所のアタリをつけるために使うのであればこれで十分だろう。

その意味では目の付け所がすぐれた製品。このコンセプトを考えた人は頭イイ。

新世代の低価格製品

最近になって投入され始めたのがスマートフォンアクセサリの
サーマルイメージャである。オモチャといえばオモチャであるが、従来に比べて劇的に安い。
こんな製品でも用途によっては十分役立つだろう。

FLIR 「FLIR ONE for iPhone 5/iPhone 5s」

FLIRONE2014.jpg

2014中頃発売。定価350$。本稿執筆時点では値崩れ気味で250$程度?

iPhone5専用機で、スマートフォンカバーの形態である。他のスマートフォンにはつかない。
高解像度(640×480)の可視光カメラと低解像度のサーマルカメラ(80×60)が並んで設けられている。

サーモグラフィの画像は、温度画像だけだと物体の輪郭がはっきりせず、何を測定しているのかわかりにくいことがある。
本機のように温度画像が低解像度であればなおさらである。
そこで、低解像度を補う機能として本機ではふたつのアプローチを採用している。

 ①超解像度補正により、160×120程度の温度画像を得る。
 ②可視光カメラの映像に対してエッジ抽出したものを温度画像に組み合わせる。

①についてはインチキっぽいところがあるが、②により温度画像が低解像度でも、
測定対象の外形が詳しくわかることから、使用感が向上している。
これはFLIRのもう少し高級な製品も備えている機能である。

本機が採用している熱画像素子の「Lepton」は、低価格撮像素子として同社のローエンド製品に
展開が進められているもよう。

Seek Thermal 「Seek thermal camera」

SeekThermalCamera.jpg

2014年暮、FLIR ONEに続いて発売。 約 200$。
FLIR ONEとは異なり、スマートフォンのUSBポートに外付けするタイプである。
iOS機用とAndroid機用の2種類があって、コネクタが違う。
スマートフォンの機種をあまり選ばないのが強み。

サーマルカメラのみ搭載しており可視光カメラは持たないが、
FLIR ONEと比較してサーマルカメラの性能は高いように思える。

 ・解像度 206×156
 ・検知温度範囲-40℃~330℃
  ⇒確度は不明ながら、FLIRの製品より広いダイナミックレンジである。
 ・画角:36°

サーマルカメラのカタログスペックを見ると、
従来製品と比較してもすごそうなスペックである。FLIR ONEがかすんで見える。
ただし、温度の確度に対するスペックが公表されていないあたりはオモチャの範疇かもしれない。

なお、スマートフォン付属の可視光カメラ画像と並べて表示をする機能がある。
サーマルカメラと可視光カメラの場所がどうしても離れてしまうので同軸カメラとは言いがたいが、
遠くの物を見るのであれば、それなりに使えるかもしれない。

なお、直販サイトは北米のみの取り扱い。
日本で買うと送料込みで300$程度。国内業者から買うと4万円くらい。

FLIR「FLIR ONE (for iOS / Android)」

FLIRONE2015.jpg
FLIRから2015年中頃の投入がアナウンスされている機種。250$程度見込み。
2014年のFLIR ONEがiPhone5専用であったのに対して、本製品はiPhone5以外のiOS機とAndroid機に対応した。
スマートフォンカバー型から、Seekのような外付け型に変更となっている。
2014年にFLIR ONE(for iPhone5)を投入したばかりで新作を投入するのは、Seekを意識しているように思われる。
値段も下がった。

スマホ用ガジェットとしての機能はさておき、サーマルイメージャとしての性能について見てみる。

・サーマルカメラの解像度: 撮像素子の改良により従来の4倍で640×480を実現。
⇒従来は 80 x 60 である。4倍すると320×240である。
 これに2倍の超解像度補正を加えて、640×480としているようだ。

 前作の解像度がSeekに比べて低いことを意識して改善してきたように思われる。
 上記が本当だとすれば、従来製品と比較してもかなりすごい撮像素子であるように思われる。

・検知温度: -20℃~120℃
⇒本機では検知温度域が上限、下限とも20℃ずつ拡張されている。
 特にマイナスの温度が測れるようになったのはうれしい。
 冷凍庫の中をサーマルカメラで見たいユーザーもいるだろう。

・前作同様同軸の可視光カメラつき。
⇒Seekに対して大きなアドバンテージといえる。

なお、FLIRは旧機種も新機種も両方「FLIR ONE」の名前としてしまったものだから、書き分けが面倒である。
Seekに押されて急遽の新製品投入だったかもしれないが、消費者を混乱させはしないだろうか。
FLIR TWOにでもすればよかったのに・・・・

Seek Thermal「Seek XR」

本記事のまとめ中に発表されたSeek Thermalの新型機。
Seek thermal cameraにマニュアルフォーカスのズームレンズを付けたもの。600m先のものが見えるらしい。
ズームレンズ以外の基本スペックはSeek thermal cameraと同じのよう。
サーマルイメージャを鉄砲か何かにつけようと画策している人には便利かも。

FLIR 「C2」

FLIRC2.jpg

FLIRから2015年Q1の投入がアナウンスされている機種。700$程度予定。

FLIR ONE(for iPhone5) と同じようなスペックを持つが、スタンドアロンで動作可能。
全体的にコンパクトデジカメ風にまとめられている。

低価格ではあるが、オモチャではなく測定器の範疇の製品。
コアはFLIR ONE(for iPhone5)と同じようなものが使われているようで、同軸可視光カメラ搭載である。

コンシューマ向け製品による低価格化がプロユース製品のローエンド機に影響を与えだした印象。

Fluke 「TG165」

FLIRTG165.jpg

2015/2/11 追加:

FLIRの「サーマルイメージ放射温度計」。 2015/01発売。700$程度。
FlukeのVT02と同様のコンセプトで、放射温度計の補助として熱画像を表示するようにしたもの。

放射温度計による測定が主であり、熱画像はあくまでもオマケであるとしている。
熱画像の色分けスケールは自動であり、スケール表示も無いため具体的な温度情報は得られない。
周囲と温度が違う場所がないか探すためだけの機能である。
サーマルイメージャがほしいだけならFLIR C2の方が適していそうだ。

熱画像の撮像素子はFLIR ONEなどと同様に80x60のLepton。VT02と比較すると解像度が高そうな印象。
しかし、本機は同軸の可視光カメラをもたないため、画面表示は熱画像勝負である。
本機は放射温度計であるからスポットを示すレーザーポインタがついているはずなので、
可視光カメラが無くとも自分の目でレーザーポインタを目視すれば問題ないだろう。

おまけ: 楢ノ木技研 「USBサーモグラフィモジュール」

naranoki.jpg

DIY派におすすめ?のUSBサーモグラフィモジュール基板。1万5000円くらい。
解像度は4 x 16と低く、正直なところ温度画像だけではほとんど意味がない。

しかし、USB可視光カメラと組み合わせてFluke VT02と似たような使い方ができる。
そのような使い方であれば、実はこれで十分かもしれない。

おまけ: Mu Optics 「Mu Thermal Camera」

2014年頃までの製品投入を目指して、Indiegogoで出資を募っていた
スマートフォンカバー型サーマルイメージャ。

結果的に本製品が市場に投入されることはなく、投資詐欺かのような終わりを迎えた。
ただし、同じ2014年にFLIRとSeek Thermalが同じコンセプトの製品を市場に投入したところからして、
決してMu Opticsが目指したものは的外れでなかったのである。

まとめ

・現行で手に入りそうな製品を一覧化してみた。
 特にスマートフォン用製品は詳しいスペックが公開されていないので、
 記載内容の一部は予想に基づく。

LowCostThermalImager.jpg

・低価格機の投入が盛んになってきた印象である。
・時間に余裕があるなら、2015年型のFLIR ONEを待つのがよさそう?
・FLIR C2が買えるのであれば、従来同等品のFLIR E4よりもかなりお得な印象。
 今後はスマホ用ガジェットのみならず、プロユースのローエンド製品が低価格化されることも期待される。

・これら低価格製品を構成する安価な撮像素子が市場に出回ることが期待される。
 そうなると、色々な製品にサーマルイメージャがつくようになるかもしれない。
 オモチャのラジコンヘリにサーマルイメージャが付くのは時間の問題か!?

コメント(1)

Likiponさん
FLIR Systems Japan、マーケティング担当です。
サーモグラフィカメラに興味を持って頂きありがとう御座います。
またFLIR製品に関して個人の目線からの評価、とても参考になります。

FLIR製品は実際に使用して頂けるDEMO体験も行っております。
ご興味があれば、DEMO体験是非ご検討下さい。

いきなりのコメントで失礼致しました。

引き続き、FLIRをよろしくお願いいたします。


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本ページの管理人

Likipon

埼玉在住の一応エンジニア。最近はシステムエンジニア気味で回路が本業でなくなってしまった。

うなりくんのファン。

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