低価格サーマルイメージャ 2018年春

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記事日付: 2018/05/12

3年前に低価格サーマルイメージャのサーベイを行った
実はその後 FLIR ONE(2015年モデル)を購入したのだが、
結局使い勝手が悪くあまり利用することなく今に至っている。

最近は市場の様子が変わってきたようなので、再調査することにした。

低価格ハンドヘルド製品

3年前の時点ではスマホアクセサリを中心に低価格機が出現し始めていたが、
2018年現在では単独で動作する中国製のハンドヘルド製品が市場に出回っており、
3年前とはずいぶん様子が変わっている。

スペックまとめ

以下の表に2018年現在手に入りそうな低価格機をまとめた。
スマホアクセサリ機種は・・・正直使いにくかったので、今回は調査対象に含めていない。

低価格サーマルイメージャ市場調査 2018 2Q.pdf

specsheet.jpg

XINTEST

Dongguan Xintai Instrument Co., Ltd.(东莞鑫泰仪器仪表有限公司)。
ローエンド機はXINTESTブランド、ハイエンド機はHti (High Tech Instruments Co.,Ltd)
ブランドとしているようだが、同じ場所にある系列会社のよう。

また、同社の製品がいろいろなブランドで売られている。
ちょっと調べただけで以下があったし、実際にはもっとたくさんあるので混乱する。

XINTEST
Hti
XEAST
KMOON
VKTECH
ACEHE
SNDWAY
PEAKMETER
ノーブランド

ただ、一部を除いてどのブランドでも同じ型番、同じスペックであるようだ。
特に売れ筋なのは以下の3種類。

「HT-175」

XINTESTの最廉価機。IR解像度32×32。ビジョンカメラはなし。

120ドル程度で手に入る驚異的安さ。
ビジョンカメラがついていないため使いにくそうではある。

HT-175.jpg

「HT-02D」/「HT-02」

XINTESTの廉価機。

「HT-02DはHT-175同様にIR解像度32×32。ビジョンカメラつき。
150ドル程度で手に入るやはり驚異的安さ。
ビジョンカメラの有無は使い勝手に直結するので、HT-175を買うならこっちにしておきたい。

「HT-02」はIR解像度60×60。同様にビジョンカメラ付き。
HT-02Dの32×32だと物足りない人におすすめか。200ドル程度なのでやはり安い。
「HT-02D「HT-02」の両者は形式が紛らわしいので購入時に要注意。
業者も混同している時がある。

HT-02.jpg

「HT-04」/「HT-18」

XINTESTの上位機種。

「HT-04」は「HT-02」の上位機種。IR解像度220×160。ビジョンカメラつき。
見た目はHT-02の色違いだが、UIが変わっているので中身は異なる模様。
価格は400ドル程度。ちょっと高い。

「HT-18」は「HT-04」とほぼ同スペック。中身もHT-04と似た感じと推定される。
液晶が大きいほか、内蔵バッテリ、ストレージ内蔵のかわりにSDカードスロット無しなど
仕様に違いがある。
個人的には「HT-04」の方が使いやすそう。

HT-04.jpgのサムネイル画像HT-18.jpg

その他の中国メーカ

あまり特筆すべき点がなかったので一覧表を参照されたい。

UNI-T (优利德科技(中国)有限公司)

赤い筐体がトレードマークのUNI-T。
低価格機としてUTi80がある。
上位機種は10万越えになるので本調査の対象外。

CEM (深圳市华盛昌科技实业股份有限公司)

割と測定器としてちゃんとした製品を作っている印象のメーカ。
最廉価機は本調査の対象になるような安物だが、ちょっとコスパが悪い。
上位機種は10万を大きく超えていくので本調査の対象外。

Seek Thermal

意外と頑張っているのがスマホアクセサリから始めたアメリカのSeek Thermalだ。
スタンドアロンのハンドヘルド機「Seek Thermal Reveal」を市場に投入している。

「Seek Thermal Reveal」/ 「XR Fast Frame」 / 「PRO」

Seek Thermalのハンドヘルド機 「Seek Thermal Reveal」シリーズは、
無印、「XR Fast Frame」、「PRO」の3種類がある。

「無印」はIR解像度206×156。これで価格は399ドルなので安い。
しかし、例によってビジョンカメラがないので、温度差が少ない環境では使いにくい。
また、センサが画面の裏方向ではなく、上方向を向いている点も使い勝手に疑問がある。
ただ、Seek Thermalで特筆すべきはカラースケールの温度範囲を手動設定できる点である。

「XR Fast Frame」は屋外利用バージョン。
視野角が狭くなっており(=ズーム気味になっており)遠くのものを見やすくなっている。
また、フレームレートが15Hzに高められており、動く物体の測定がしやすそう。

「PRO」は高解像度版。IR解像度320×240。お値段もそこそこ。

seekthermalreveal.jpg

FLIR

初代FLIR ONE以来、ローコスト撮像素子Leptonを持つ低価格製品を市場に投入している。

「TG130」は画像保存機能すらカットした割り切りで250ドルの低価格であるが、
今となってはより低い価格で「HT-02」が入手できてしまう事を考えると、
個人で買うにはいまひとつ。

「TG165」は放射温度計にサーマルイメージャがおまけで付いた製品だが、
中国製品に比べるとコストパフォーマンスの点で一段劣る。

「C2」「C3」はコンデジ風低価格機。低価格といっても700ドル超なので、
個人で買える範囲を少し超えている印象。

FLIRはスマホアクセサリ機で低価格帯をがんばっているが、
スマホアクセサリは使い勝手がいまひとつなのでここでは扱わない。

評価のポイント

IR解像度

低価格機は32×32、5万出すなら200×150くらいのものが手に入る。
必要となる解像度はおそらく以下のような感じだ。

① 家の中の隙間風を探すような用途: 32×32 あれば最低限用が足りる。
② 回路基板の加熱部を探すような用途: 32×32では心許ない。60×60ならまあよい。より細かければよりよい。

ビジョンカメラの有無

多くの物体は温度が一様であるから、温度画像だけでは物体の輪郭がわからないことが多い。
したがって測定中はどこを測定しているか見失いがちであるが、
ビジョンカメラ付きの製品であればその点便利である。

特に画角が狭い製品はどこを測定しているか見失いやすいので、ビジョンカメラは必須である。

FLIRの製品はビジョンカメラから輪郭抽出をして、温度画像に重ね合わせる機能(MSX)があり大変便利。

中国製品はビジョンカメラの画像と温度画像をそのまま重ね合わせる機能を持つものが多いが、
FLIRの画像処理に比べると見劣りする。

フレームレート

使い勝手の上ではフレームレートも大切だ。
サーマルイメージャは熱い場所や冷たい場所を探す用途に使いがちであるが、
フレームレートが低いとセンサの動きに画像がついてこないためいらいらする。

視野角によるが、フレームレートが6Hzでは使い勝手悪く感じる。
9Hzであれば、まだ遅く感じはするが、大分マシだ。

カラースケールの温度範囲設定

全ての製品がカラースケールのオートスケール機能を備えている。
すなわち、温度画像の最高温度点と最低温度点を使って、自動で色のスケーリングをしてくれる。
測定対象の温度が不明なときはなくてはならない機能だ。

一方、ほとんどの低価格製品が、手動スケール機能を備えていない。
これは非常に問題だ。何かのビフォーアフターを示すには同じスケーリングで
撮影する必要があるが、オートスケールのみだとこれができない。
いくら画像を撮ったとしても、スケールが違う画像同士では比較ができないから無意味である。

「オートスケールを止める」機能を持つ製品もあるが、これはオートスケール実行後に
それ以上スケールが変わらないよう固定するだけの機能だから、
別のタイミングで実施する測定で同じスケールを用いることはできない。

FLIRなんかはオモチャと測定器を差別化するために手動スケール機能を
わざと省いているのかもしれないが、中国製品まで同様なのは不思議な事である。
技術的には何の問題もなさそうだが・・・・

まとめ

今回のサーベイのまとめである。

① 資料作成に向いた低価格製品はない

報告書とかWebの記事とか、資料上において温度の比較をわかりやすく示すためには以下が必要だ。

(1) 手動スケール
スケールの違う温度画像同士は比較にならないから、これは必須だ。

(2) 三脚固定
同じ場所を正確に同じように測定したいことも多いだろう。

(3) ビジョンカメラ画像合成
何を撮影しているのかわからないと説明にならない。

これらを全て満たすのは FLIR 「C3」 だけである (※FLIR「C2」は三脚アダプタが無いよう)。

特に手動スケールできる製品が少ないのは厳しい。
しかし、FLIR「C3」は800ドル超え。もはや低価格製品とはいえないだろう。

次点としては手動スケールのできる「Seek Thermal Reveal」を挙げておく。
少なくとも温度画像の比較だけはきちんとできる。

② とりあえず温度画像を撮りたいならXINTEST「HT-02D」

「HT-175」も安いが、ビジョンカメラがないと大変なので「HT-02D」を推しておく。

② 細かいものを観察するなら「HT-02」

回路等細かいものを扱うときは、より解像度の高い「HT-02」にしよう。
お金があるなら「HT-04」もよい。

以上。

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Likipon

埼玉在住の一応エンジニア。最近はシステムエンジニア気味で回路が本業でなくなってしまった。

うなりくんのファン。

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